オーディオ趣味の世界に研究心を

オフ会の様子

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第4回発表会レポート

2013年10月13日(日)東京都中野区 中野ゼロ 視聴覚ホールにて開催


2013年10月13日(日)今年もスピーカー再生技術研究会の発表会を開催することが出来ました。
2011年と同じく会場は、中野ゼロの視聴覚ホールです。
今年は、あまり前宣伝しなかったため、あっとホームな環境で発表会を実施出来ました。

今回の来場者数は昨年よりやや少いようでした。このくらいのほうが良いといえば良いですが、 小さい会場では、入りきれないと困るし、音響的にも大きなほうが良いでしょう。


各作品の資料は、レポートのダウンロードをご参照ください。資料をダウンロードすることができます。


最初は、会場・機材の手配と進行にご尽力頂いた加藤さんの、波動スピーカーの再現コピーです。
入手可能な情報から、なるべく忠実に再現したそうです。
波動スピーカーというのは製品名なので、この名称を使うことはできませんが、上手な命名だと思います。
加藤さんは、別な作品を準備されていたのですが、Stereo誌のコンテストの最終選考に出してしまったため、 代わりにこの作品を持ってこられました。
加藤さん自身、この作品に思い入れがあるという訳ではないそうです。
私は、過去に一度だけ波動スピーカーを聴いたことがあります。
そのときは、そのメリットが良くわかりませんでした。
今回聴いてみて、何となく分かった感じがしました。
波動スピーカー自体、製造メーカーがどのように認識しているかどうかは分かりませんが、音場型のようです。
左右それぞれのスピーカーから外に向かって、直接音が放射されます。
この直接音は、正面のリスナーからは聞こえにくくなっています。
しかし、これが、に反射して、ディレイを伴って空間で合成されるため、音が分かれて聞こえます。
また、もうひとつは、逆側のスピーカーユニットの背面から放射された逆相音が、空間で合成されて差信号となり マトリックススピーカーの効果を生むようです。
これは、2年前に私が出品したものと同じ効果のようです。
音場型は、まだまだ研究の余地があり、面白そうです。
一度、音場型大会をやってみたい気がしました。

加藤さんの発表には、心理的影響の実験という実験が隠されていました。
スターウォーズのテーマ曲の冒頭部分を聞きます。
そこにヴァイオリンの音があるかどうか皆に訪ねます。
皆、よく分かりません。
そして、解説を加えながら、最初から、ヴァイオリンの強奏があることを説明します。
再び聴くと、それが聞き取れるようになり、そこを意識して聴くようになります。
この実験の裏にある加藤さんの意図は特に表明がありませんでしたが、それは聞かないことにしましょう。
このような例は相当多いと思います。
詳細はこちら。



続いて、高橋さんから、MCAP-CRとフォスター電機(株)名古屋式DBを複合したマルチバスレフの紹介です。
5cmという超小型ユニットを使用し、箱の工夫で、低音まで、バランス良く鳴らすこと、また、楽器と同じ仕上げを 適用し、楽器を楽器らしく鳴らすことに挑戦しました。
スピーカーユニットには、ScanSpeak 5F/8422T03 (ステレオ誌2013年8月号付録 )を使用しています。
タイトルでは、分かりにくいですが、構造は、副空気室を小さめにしたMCAP-CRになっています。
副空気室は2つあり、それらの容量の合計が、主空気室の容量と概ね等しくなるよう設計されています。
私は詳しくありませんが、ダブルバスレフ型は、副空気室が主空気室より大きな長岡式がずっと主流であり、 何年か前に、副空気室を主空気室よりも小さくする方式が登場しました。
これが名古屋式と呼ばれています。
ちなみにMCAP-CR方式には、空気室の大小に規定はありません。
こうした設計が、再生音にどのような影響を与えるかについては、興味のあるところでした。

高橋さんの作品は、小型でありながら低音が良く出ます。
低域から高域まで、バランスが良いのが特徴です。その半面、超高域が少し寂しく感じられました。
振動板が小さいので、中野ゼロ視聴覚室のような大きなホールには厳しいですが、一般住宅であれば 問題ない音量が出ます。

また、楽器の音を検証するために、ヴァイオリンと同じ、シュラックを表面に塗装しています。
その結果、ヴァイオリンらしい音色になったかどうかは、今回の試行以外にも検証が必要と思いました。
おそらく、小型で堅牢な構造では、表面処理の固有の音は出しにくいように感じました。
今後、もう少し大型で、剛性を落としたシステムで、表面処理の違いを確認してみたいと感じました。

高橋さんのアプローチは、自身で良いと感じたことを、実践してみることです。
こうしたアプローチから、効果の高い手法が見付かっていくのだと思います。

なお、Stereo誌の付録の5cmユニットは、個人的には初めて聞きました。
小型の割りには、高音がきつくないキャラクタなので、居室で音量を上げずに楽しむのに向いているように思いました。

詳細はこちら。



大沢さん、Foster電機の防水型10cmユニットを片側4発使用したシステムです。
このユニットは、最初は480円で売っていたもので、購入したら音が良かったので、大量に追加購入した ところ、1個300円になったそうです。
見た目は普通のトーンゾイレですが、各ユニットの動作は全く同じではありません。
同じユニットをツィータとしても使用しています。
箱の中には、多孔式の仕切りがあり、この仕切をゴム栓で塞ぐことにより、上下のエンクロージャの 縁を切ることができます。
また、ダクトも同様に前、後、下とゴムキャップで塞ぐことにより切り替えることができます。
こうした遊びの要素は、実際の使用状態に合わせて的確に切り替えることができます。
大沢さんのシステムは、視聴覚室のような広いホールでも十分に対応できることを証明しました。

音は、安物自慢を想像したらとんでもない、高級品のような立派な音でした。
同じフルレンジでもツィータとして使用しているユニットがあることは、高域を美しく鳴らすのに 向いているようです。

また、ユニットの取り付けにも一工夫あり、フロントパネルにマウントせずに、リアパネルから 引っ張ってユニットを固定しています。
一般用途のスピーカーユニットは、フレームの剛性が不足することが少なくありません。
この防水型ユニットも、例外ではありません。
しかし、引っ張って固定する方法では、フレームが歪むことがなく、ユニットと箱とが一体化する ためか、音の濁りを感じさせませんでした。

大沢さんの発表は個性的で、同じ曲を、別な演奏者で聞かせてくれました。
スピーカーシステムのパフォーマンスも相まって、それぞれの歌手の違いを明確に聞かせました。

なお、大沢さんは別なシステムも持参されましたが、時間切れで聴くことができませんでした。

詳細はこちら。
当日発表できなかった作品はこちら。



小高さんは、基本に則って、丁寧に造り込んだ3ウェイスピーカーシステムを発表しました。
16cmウーファーを密閉で使用し、ミッド〜ハイのホーン、スーパーツィーターもホーンという構成です。

途中、プロジェクタの設定のために係の方が来て中断となってしまい、申し訳ございませんでした。
プロジェクタを使用する場合には、別なところで借りたほうが良いようです。
使用する前にわざわざ設定の係が来なければならないという面倒なシステムでした。
私自身、プロジェクタの作業に対応しなければならないという状況だったので、しっかりと聴くことが できませんでした。
このため、全体的な印象について書きます。
小高さんご本人は、16cm一発の密閉では、低音が出にくいと感じておられましたが、私は、コントロール された低音が十分に出ていると思いました。
密閉方式の誇張のない低音はとても好ましく感じました。
実際にどの程度音に影響するのか分かりませんが、ミッドハイのホーンドライバがかなり引っ込んでいる のに対し、スーパーツィータがバッフル面にあると、何となく気になりした。
スーパーツィータは、波長が短いので、位置は殆ど影響しないのではないかと思いますが、 視覚は聴覚に影響を与えると思うので、その点は不利なのかもしれません。
時間があれば、スーパーツィータ有無の違いを聴いてみたいと思いました。

また、ホーンで構成された外観と、よくコントロールされた低音は、往年の高級機を彷彿させるものでした。
自分がオーディオに興味を持ち始めた頃を思い出し、とても懐かしく思いました。

発表者コメント

 広い会場では自宅と異なり、低音不足が顕著となり、密閉型はPA用途に向いていない事に改めて気付かされ、  大変勉強になりました。
 現在、バスレフも可能な様に改造し、(密閉型、バスレフ型、ローブースト型) 各種方式を実験/改良中です。
 今回、初めて参加させて頂きましたが、皆さんのユニークな作品に比べ、全く捻りの無い作品でしたので、  次回は、一捻りある作品発表を目指したいと思います。

詳細はこちら。



花田さんは、この日のために、北九州からヴォイスコイル振動型のスピーカーを持参されました。
ヴォイスコイルそのものが振動板になっています。
ヴォイスコイルそのものに剛性を持たせるのではなく、ヴォイスコイルを横切る磁場の配列を 最適化し、全体を均質に駆動させる方式です。
写真で、銅箔の振動板のように見えるのが、ヴォイスコイルです。

花田さんは、開発に至る経緯について、説明されました。

私は不勉強で存じませんでしたが、この方式は、もう何年も研究され、発表もされています。
磁場の配列については、十分に時間をかけて動的解析を実施し、最適な幾何的構成を求めるとのことです。
解析を十分に実施しないと、マグネット代だけで、ん十万円のコストが飛んでしまうそうです。
コイルを巻くのは意外に難しくないとのことでした。
マグネットの配置以外に気を付けることは、振動する部分の固有の音を出さないようにすることだそうです。
私などは、固有の音を現実として受け容れていますが、こだわれば、それではダメだということです。

私の聴いた音の印象は、明確ではっきりとした感じです。
他の参加者からも音が良いと評判でした。

自分がむしろ気になったのは振動板の動くで、どのように振動板が動くのか気になり、近付いて 振動板を見つめていました。
振動板は、完全な平面としてどの場所でも完全に同じように動くことはなく、微妙なバランスがありました。
このため、運転中の振動板は、同色の光を微妙に乱反射し、幻想的な幾何学模様を作っていました。
これは、剛体を目指した完全平面の振動板との違いなのですが、このような、微妙な違いがあるほうが 良いのかもしれません。
販売すれば高価なシステムですが、技術的に価値の高いシステムであり、面白いと思います。

詳細はこちら。



中山さんは、昨年に引き続き、電磁型薄型スピーカーを持参されました。
サイズは2種類で、うち小さい方は、そのままと、箱に付けたものです。
箱に入れたというよりは付けたというほうが適切な表現でしょう。
電磁型スピーカーは、過大入力で壊れる振動系がなく、頑丈だそうです。
仮題入力で壊れるのは電気接点や接続配線くらいのようです。

音は昨年とあまり変わらないようでした。

昨年は、箱に入れた音を聞きたいというリクエストを受けたので、今回は、小さい方を箱に付けたものを
準備されました。
箱に付けると低音レベルが上がるため聴きやすい音になりました。

この電磁型システムは、過大入力で壊れないだけでなく、水中でも使用できるという業務用への適合条件 を満たしています。
これに対し、コストは大きく、また、家庭用のユースに適するまでには、まだ、工夫が必要そうです。

技術的なチャレンジとしては非常に興味深く拝見しました。

いつの日にか、風呂場で、湯船に浸かりながら、電磁型スピーカーで、音楽鑑賞という日が来る ことでしょう。

詳細はこちら。



古舘さんは、音響レンズの効果を確認すべく、レンズを自作されました。
市販品の音響レンズは、薄板を曲げ加工したものですが、古舘さんは、これを、チップボードで製作された ということです。
見事に仕上げられており、見ただけでは材質は分かりません。
スピーカーシステムは、Tangbandのウーファーを使用した2ウェイで、さすがにベテランだけあって、 見事なバランスにまとまっています。
古舘さんは、事前に、音響レンズの効果を、測定による数値で確認されており、その値も説明されました。
ここで、音響レンズを付けた状態と付けない状態とで比較しました。

音響レンズを付けた状態で、スピーカーシステムの方向を変えると、確かに高域は落ちますが、音響レンズを 付けない場合と比較すると、高域の落ち方はなだらかです。

また、音響レンズを装着した状態と装着しない状態で、小編成のクラシック曲を聞きましたが、 音響レンズが、音場効果に悪影響を与えたようには感じられませんでした。

音響レンズがかつてのように市販品に見られなくなった理由は、性能にあるのではなく、コストや、展示の 問題、または、外観の訴求力がコストに見合わないなどの別の問題があるのではないでしょうか。

往年の銘機を知らない世代の人は、音響レンズに興味を持つと思いますし、知っている世代は、懐かしく 思うのではないでしょうか。

こうした、忘れられつつある技術の効果を、古舘さんは実証されました。

さて市販品には、かつてのように装着される日が来るでしょうか。

詳細はこちら。
古舘さん測定の音響レンズ特性データはこちら(LibreOfficeが必要)。



続いて、鈴木智彦さんの共鳴管スピーカーシステムです。
鈴木さんは、この発表会には、初参加です。
8cmのフルレンジユニット、パークオーディオのDCU-F102Wを使用したシステムです。
このシステムは、発表前に持参した発信器で、鈴木さんの設計通りに動作することを確認して いました。
発表では、音に集中して聴くことができました。
鈴木さんの共鳴管は、2回折り返し、連続した3本の直管による構成です。
駆動側の直管には吸音材を充填しています。
折り返しが長岡式より多いこと、吸音材の使用量が多いことから動作が弱くなることを心配 しましたが、そのような悪影響はなく、むしろ、望ましくない共鳴音の排除効果が感じられました。

私が鈴木さんの作品を聴いたのは、これが初めてではありません。
聴く度に私が思うのは、鈴木さん自身、スピーカーシステムを自作するのが好きだということです。
いままでに聴いたどの作品も鈴木さんの音がしました。
今回の作品も例外ではなく、バランス良くまとめられ、また、フルレンジならではの、自然さ それでいながら力強さと歯切れの良さを感じる音作りでした。

この研究会は、どちらかというと、他に例のない方法にチャレンジする人が多いのですが、 鈴木さんは、他に例があっても、それを改善して作りこんでゆくアプローチです。
この作品も、同じユニットを持っているという方には間違いなく勧められるものです。
また、私も同じ鈴木でありながら、自分は、音の善し悪しを気にしないのに対し、こちらの鈴木さんは 音の良さで聞かせます。

こうした対比は実に興味深いものでした。

詳細はこちら。



予定の最後は、電気・電子回路に特に強い石田さんと、私、鈴木 茂とで、別々にシミュレーションの 紹介を実施しました。
私自身、いつかはやってみたかった発表です。
今回は何も発表しないつもりでしたが、石田さんが発表されるのでそれに乗っかりました。

石田さんは、スピーカーシステムの特性を電気回路の伝達関数に置き換えて、周波数特性まで シミュレーションするという画期的な方法の紹介です。
もともと、スピーカーシステム設計には、ThielのSmall Parameterというものが使われていますが これは、スピーカーシステムの機械特性も含めて電気特性の等価回路に置き換えるものです。
こうした、等価回路への置換えは、電気技術者以外にはなかなか難しく、私を含めてちんぷんかんぷん だった人が多かったようです。
写真は、石田さんが、今回のシミュレーションの対象とした、鈴木茂設計製作のDU50x4aというモデルの ポート付近の特性を測定したものと、シミュレーションしたものを比較したところです。
山の位置が見事に一致しています。
こうした、学術的なシミュレーションがいかに大事かが解ります。

詳細はこちら。

引き続き、鈴木茂のシミュレーションです。
こちらは、電気特性をあまり考慮せずに、振動系の特性を物理的に解いて、音圧特性を推定するという 直接解法です。
等価回路による解法と比較してどうだったのでしょうか?
ということで、音圧が高くなる山の位置を見るとほぼ同じ周波数にピークが出ています。
また、発信器を使って簡易的に応答を確かめると、音圧は、同様の傾向を示しました。

私自身のシミュレーション解法は、前例がなく、ゼロから自分で開発したので、等価回路による シミュレーション解法との整合性がとれて安心しました。

詳細はこちら。


予定は以上だったのですが、急遽大阪から来られた松さんがFALのユニットを使用した発表されました。
松さんは、このところ元気がなかったのですが、今回は、システムについて、その成立ちを語って頂きました。
このシステムは、見ただけで、平行面がないように作られていることや、仕事が見事なことがわかりますが、 表面にステンレス鋼帯が仕込んであることや、ポートの形状に往復が考慮されていることは分かりません。
FALで購入された成行は、話として面白く、皆さんに大受けしていました。
私個人的にも、FALの社長さんの語り方を知っているので(会話したかどうか覚えていませんが)、こうした 話は、興味を持って受け止めました。
残念なことに、話のインパクトが強く、音はあんまり覚えていません。
どなたか、ご感想をお願いします。

後記

スピーカー再生技術研究会の発表会もこれで4回目になりました。
発表者が増えると、それだけ内容が充実し、面白くなります。しかし、その半面、時間不足を感じます。
こうした、誰でも出入り自由な発表会とは別に、泊まり込みで時間が自由な仲間内のオフ会があっても良いのかな、 と思ったりします。
それは、今後考えて行きましょう。

発表会は、ちょうど良い参加者で、参加すれば発言できる雰囲気があります。
来年は、もう少し、事前のアピールをできればいいなと思います。
発表者の皆さん、参加の皆さん、また、会場の手配、設定、写真の提供などに尽力頂いた加藤さん、どうも有難うございました。


  • イベント情報
  • 2014年のオフ会(中野ゼロにて実施)
  • 2012年のオフ会(すみだ産業会館にて実施)
  • 2011年のオフ会(中野ゼロにて実施)
  • 2010年のオフ会(アカデミー湯島にて)
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